人間将棋会場

だけどーおーいかーけるぅー、きみにとーどくまでぇー、晴れ。

  • 98年製の、

ビデオデッキが壊れた。電源が入らない。ぽち、と電源ボタンを押しても、うふん、も、いやん、も言わない。無反応。応答なし。いやはや困った。ご存知!無精者のわたしは、モチロン!ビデオテープを入れたままである。困った。非常に、困った。借り物のテープではないのが唯一の救い、だがそれにしても、困った。


ビデオデッキに関しては、2010年デジタル3D録画まで出来るこの世の中、磁器録画機器は最早お役御免でも致し方なし。12年もの間よくぞここまで頑張ってくれた、と諦めもつくが、中身が、中身こそはまったくもって諦めのつかない大事な大事な、記憶よりも記録に残しておきたい!マイスゥイートメモリー。困った困った困った。せめて中身だけでも、どうにか、こうにか。とブチつきながら6畳のほどの城内をぐるぐる回っていると「困ったときこそ、石原ヨシズミ!」と、閃く。


と、いうわけで石原ヨシズミ的解決方法であるところの「タウンページ」をぺらり捲る、と、さすがヨシズミ!あるではないか「電器店」の頁に「故障・修理」の項目が!しかも出来る男・ヨシズミ!はメーカー別の修理窓口まで教えてくている。さすが、だ。うむ。早速、該当メーカ窓口に電話をかける。程なくして、繋がるも「現在こちらの窓口はフリーダイヤルにてお継ぎしております。お手数をおかけしますがコチラの番号までおかけ直しください」とツレナイメッセージ。ヨシズミ!ツメが甘いぞ!


改めてフリーダイヤル窓口にかけ直し尋ねたところ「訪問料として5千円から1万4千円程の費用が必ずかかります。修理となれば別途部品代、修理できない際のビデオテープの取り出し料は1万円となっております。」との驚愕の返答。絶句。高い。取り出し料、1万円って…。「大事だよ!困ったよ!どうしよう!」とは言いつつも正直、そこまでかけて取り出したいビデオテープでも無いし、なぁ。ううむ。と、数秒悩んだ末に「もう一度検討してみます。」と電話を切る。


ヨシズミにはメーカー以外の修理業者も記載されている。「メーカー以外なら安く修理してくれるだろう。」という素人算段でもって別の修理業者へ電話を入れる。結果、その業者の修理工場へ発送し修理するため、訪問料こそかからないもののメーカー料金と大差なし。やはり、お高い。ううむ。またもや「もう一度検討してみます。」と言い電話を切る。


最後の手段として、町内にあるクリーニング店兼電器店へ持ち込む。かつてはピカピカの新品家電製品賑わう町の電器店であったこの店も、今や大型テレビが数台置かれただけのクリーニング店に。が、しかし本業は電器店。ヨシズミにも「電器店」として記載されている。ならば、問題なしだろうと持ち込んだところ、店内の売り物であろうテレビの前に、商談用であろうテーブルセットに座ってお茶をすすりながら煎餅をかじっている店のおばちゃんに


「部品があるかどうか調べてみないことにはねぇ…。え、12年も前のなの?!それじゃあ直るかどうかも分からないねぇ…。あ、テープも入ったままなのねぇ。え?直らなくてもいいの?最悪テープだけ取り出せればいいのね?あ、そうなの?あらアンタ1丁目の編物教室のところのお嬢さんでしょ?あら、もうお勤めしてるんでしょう、ねぇ。どこまでお勤め行ってるの?え?トウキョウまで。ふーん、あらそう。大変ねぇ。朝も早いんでしょう?ねぇ。え、そんなに早いの。大変ねぇ。でも、まだ若いから…、ねぇ。うんうん。え?テープの取り出しが幾らかって?そうね、3千円ね。3千円はかかるわよ。取り出すのだって技術が必要なんだから、それくらはかかるわよ。それじゃあ、今日預かってみておくから明後日来てみてよ。明日、ウチ定休日だから明後日ね。」


と申し渡された。
テープ取り出し技術料として3千円。わたしのマイスゥイートメモリー代としては妥当な料金だ。うむ。