• 土よう日

朝10時に羽田空港集合。今回の参加者は部署の長2名、呑人長グループ員(現グループ長、ワッキー、先輩事務員さんなど他9名)とおミソ(わたし)の計12名。前日に参加者にメール配信された「勉強会のしおり」にはデカデカと「酒気を帯びて勉強会に出席するべからず!」と記されているにも関わらず集合の時点で参加者8割の手には缶ビールが握られていた。


その後も彼ら(主に部署の長2名、現グループ長で成すチーム・アダルティ)はチェックインしては一本、保安検査を通過しては一本、トイレに行っては一本。と、勢いは止まらずごびんごびんとビールを呑み続ける。他の面々も「長たる方々に従え!」とばかりにごびごびと呑み始める。ほどなくして「ビールごびん会社ごびごび部ご一行さま」が出来上がる。今回の旅の目的は「勉強会」だというのに、「酒気帯びるべからず!」だというのに、出発前だというのに、参加者8割が赤ら顔。まったくやれやれ、だ。「出雲行きのお客様はお早めにご搭乗をお願いいたします!」とのアナウンスが鳴り響く中もしぶとく呑み続けるアダルティたちを引きずって搭乗完了。それをもっていよいよ、というかようやっと今回の旅が始まる。本当に、まったくもって、やれやれだ。


わりと可愛らしい飛行機で羽田を出発し、一時間ほどで神の国出雲空港へ到着。中央列の座席ではあったが着陸時にちらり見えた景色に、「滑走路のわりと直ぐ近くに民家が!え、飛行機ってこんな近くに降りれるんだ?!す、すごいぞ!」と、主に羽田やら千歳、千歳やら羽田、羽田やら千…、羽田と千歳のわりと大きな空港にしか降り立ったことのないわたしはちょっと否、大興奮。

  神々しい!空港に到着。
  可愛らしい飛行機のお顔です。


到着後「ごびごび部」ご一行さまであるところの我らはバスに乗り込み、今回の勉強会テーマでもあり、講師・呑人長が待つ出雲大社へと移動する。出雲大社は縁結びの神さまとして有名というはご周知の通り。どちらかというと女性といものは「縁を結んでなんぼだぜ!」という生き物。乗り込んだバスも「是非とも良縁、ご縁を結びたいぜ!」という老若女女で大賑わい。皆、一様にウフフー、アハハー、と楽しそう。そんな中にどちらかというと「縁結びよりも酒だ!」の赤ら顔の「ごびごび」ご一行さまが乗り込む。ミスマッチ。が、「ごび」ご一行さまも負けじといろんな意味でウフフー、アハハーと楽しそう。


「おお、なんと神々しい山々なのだ!流石、神の国!」だとか「おお、なんと神々しく垂れる稲穂なのだ!流石、神の国!」だとか「おお、なんと神々しく点灯する信号機なのだ!流石、神の国!」だとか、と、車窓を流れる景色にいちいち「神々しい!」だの「神の国!」だのと色めきたつ「ごび」一行。そんなどちらかというと面倒くさい「ごび」を乗せたバスは40分ほどで出雲大社へ到着。出雲大社に到着したら、したらで、さらにウキャー!と盛り上がる「ごび」。「集合写真だ!集合写真を撮らずしては何も始まらん!」というとある長の一言で「出雲大社」と記された鳥居前で集合写真をぱちり、と撮影。

  ぼやけクマ子でぱちり。


その後、大社・青銅鳥居前で待つ呑人長が待ちくたびれ迎えに出向く、それぐらいの時間をかけてたかだが数百メートルの道のりをキャッキャッ、あちらこちらへ寄り道寄り道と移動する「ごび」。


 まずはここで浄めてね。
 おお!神よ!



「遅いよ!」と迎えに来た呑人長にたいして侘びる気持ちよりも再会を喜ぶ気持ちが勝り、両手をあげて呑人長を囲んでキャッキャッするひどい「ごび」。中でも部署の長が一番キャッキャッしていた。そんな風にして再会の儀式を一通り済ませ、いよいよ講師・呑人長の勉強会スタート。つい数分前まではデヘヘーと赤ら顔でにやけた「ごび」ではあったが、一度勉強会が始まれば熱心にメモンを取ったり、パチリパチリと資料を写真におさめたりと仕事モードに。仕事の「ごび」はちょっと違う!いい顔している!


みっちり半日かけて勉強会が終了。その後、まだ本日の業務が残る呑人長と別れ、しばしの自由行動。先輩事務員さん、ワッキーやらやらの「どちらかというとヤング」チームとともに出雲大社内をうろつく。

 「神在月」の時、神様はこちらにお泊りです。
  神の国はなにかと大きい。
  これも大きい。
  やっぱり大きい。
  ううむ、大きい。
  ここにお賽銭がささるとご縁が!さされ、ごえーん!
  そして、牛がいる。
  牛と同じ角度で!
  あの有名な、因幡の!兎の!ねっ!
  熊!兎!神!



そろそろと日が暮れ出した頃、今宵の宿へと向う。


  神の国の日が暮れます。



今宵の宿はビジネスホテル。わたしにとって人生初のひとり部屋。「神の国で迎えるこの初体験。なんとも縁起がよろしいではないか!」と相変らずのよく分からない事をブチつきつつ通された部屋は小奇麗、かつ広すぎず狭すぎず、かつベッドは大きめ!の初体験を飾るには丁度良い部屋であった。


荷を解き、明日着る服(ただの長袖のテーシャッツ)を無駄にハンガーに吊るしてみたり、鏡付き机に持参した化粧道具(マスカラとビューラーと日焼け止めと仕上のお粉)を一つ一つ無駄に並べてみたり、窓のロールカーテンを無駄に開け閉めしてみたり、部屋の電灯をパチパチと一つづつ点けては消してみたり、何度も手を洗いに無駄にユニットバスへ行ってみたり、とひとり宿泊の儀式を一通り済ませていたならば、あっという間に夕食の時刻。



夕食は事前に予約した宿近くの食事処へ。呑人長と合流してヤンヤ、ヤンヤと出雲の幸を美味しく頂く。そして「酒気帯びるべからず!」を律儀に守ったわたしは、ここで、ようやっと、本日一杯目のビールをエイヤー、ごぶんと流し込み「ごび」の仲間入りをする。一日中口うるさく「今日は酒気帯び厳禁ですよ!」「神域がけがれますよ!」とぶちついていた先輩事務員さんとわたしが「ごび」の一員に加わり、全員が「ごび」と化したところでいよいよ本調子で「ごび」始める「ごび」。止める人間はもう居ない。「ごび」ばかり。


かっぽかっぽとジョッキやらボトルやらを空けすっかり調子づいた「ごび」は「二次会だー!」「おー!」と雄たけびをあげながら「ここだ!」という店を見つけるべく神の国・出雲の町を歩き回る。勝手分からず、むやみやたらに歩き回った結果、肌色部分多めに着飾ったおねいちゃんやら、仏さまの如くパンチの効いたヘアースタイルのおにいちゃんやらが多く見受けられる界隈「いかがわしい」を軽々飛び越え、どちらかというと「デンジャー」な地帯に足を踏み入れてしまう。「どうにかなる前に、然るべき店を見つけ非難しなければ!」と各々が思うなか一番の「ごび」が「ここに決めたよー!」と、とある店の前で、見ず知らずのおねいちゃんの肩を組み、ご機嫌に手をふり大声を出していた。ああ、もう!


   悪夢という名!


どうだろう。「デンジャー」とはまた違った意味での「キケン」な匂いがする看板である。一瞬躊躇するも他の「ごび」も酔いが手伝い、すっかりどうでもよくなり「後は野となれ山となれだ!」とその店に決める。明日の紙面に載る覚悟を決めて入店してみるとまったくデンジャーでもキケンでもない、一般的な、何処にでもあるカラオケスナックであった。店の雰囲気にすっかり安心した「ごび」は初めて訪れたくせに勝手知ったる、とばかりに調子に乗ってがぼんがぼんとお酒を呑んでみたり、朗々と歌い上げてみたり、ソレソレと飛び跳ねてみたりと、出雲の夜を満喫するのであった。


自宅へと戻る呑人長を見送り、「ごび」そろって宿へと帰る途中。後方で「ゴゲンっ!」と深夜の出雲に響き渡る大きな音がしたので振り返ってみると、どこぞのお嬢さんが派手にスッ転んでいた。そのお嬢さんを見て「うわっ!痛そうですね。大丈夫かしら。」といったわたしに対して「ごび」は口々に「今、スッ転んだのはお前(わたし)だと思った!」だの「この中であんな派手な音を出してスッ転ぶのはお前(わたし)しかいない!」だのと好き勝手なことを言ってのけたのだ。「そんな…。否定はできないけれども…、そんな風にみんなはわたしの事をみていたのね。くっ…。」と若干くちっ、としたところで神の国・出雲一日目終了。