朝。目が覚めてみたならば、なんだか様子がおかしい。何処が、というかなんだか全てがおかしい。どのように、というか理由もなくおかしいのだ。しっくりきていない。なんとなく都合がついていないのだ。己も、それを取り巻く世界も、何もかも全てが昨日とは違うのだ。


寝床の中で何がおかしくて、何がおかしくないのかを調べてみる。眼をきょろきょろと動かしてみたり、体の先から順にぞわぞわと動かしてみたりする。するとどうやらこの世界から全ての「厚み」がごっそり抜けている、ということが分かった。ぺらんぺらんなのだ、全てが。布団もわたしの体も全てが横から見たらほぼ線。全くの、線だ。ううむ、と吐き出す唸り声もぺらんぺらん。これはたいそうおかしな感じ、だ。ううむ。ぺらん。


「何故このような事態に巻き込まれたのか」を導き出すべく「未だ夢の中ぞ。」とぶちつく脳を無理くりフル回転させた結果「ははあ!」と合点がつく。なるほどなるほど!そうであった、か!と納得する。ならばそれでも良いだろう。厚みの無いこと以外はそんなに不都合な事はあるまい。むしろ意外にしっくりしちゃうかも、この世界。と今日一日厚みの無い世界での生活を受け入れる事にした。実際、朝の儀式(着替え以外)は滞りなく済んだ。


そして日が暮れる頃には徐々に厚みを取り戻し、昨日までのソレへと世界が戻っていった。ぷくぷくと厚みを取り戻す様を眺めながら「『四月一日』さんの仕事っぷりは流石だなあ。厚みを抜くのはお手の物だなあ。『わたぬき』と名乗るだけあるなあ。ううむ。」と若干薄さの残る感嘆の溜息をぺらん、と漏らした。


今日は四月一日、『わたぬき』さんの日。