創作すぎやしないかい?

親指が痛い。爪を切りすぎた。雲が多い。

『こんなにひどい白髪頭になったのもあなたがしっかりしないからよ。一体どう責任を取るつもりなの、云々。』



と、我が母から理不尽な言い掛かりをつけられたので「それは…、わたしのせい、も、少なからずはあるやも知れぬがおおよそは老化のせいだと思うよ、かあさん。」との文句をむぐぅと飲み込み、速やかにステレオヘアーへ予約を入れる。我がヘアーも誰其に理不尽な言い掛かりを最低でも四つはつけたくなるひどさではあるが、都合つかず今回は諦める。ああ残念。



そして迎えた本日。
終業後ステレオまで迎えに行くからね、と母に言い聞かせ、出勤。「ああ、どうせ迎えに行くのだから予約はないが、ついでにチャチャっと我がヘアーも素敵ヘアーに…。いやいや。我が儘で迷惑をかけてはよくないな。うむ…、がしかし…。」などとブチブチしながら午前の業務を終える。すると幸運。午後から本社へお使いに行き、そのまま帰宅しても宜しとの命をうける。



さらなる幸運。本社への移動中に母から「迷った。助けて。」と電話が入る。電話の向こう、若者の街・原宿でパニックから喚く母に然るべき場所を指示するという難題をどうにかクリア。その際「予定より随分と早くステレオに向かえることになったから、もし、迷惑じゃなく、お手すきの方がいたら娘のヘアーも…、と頼んでくれはしないだろうか、かあさんよ。」と母に頼む。素敵ヘアーを手に入れるチャンスが我が目の前に。



通常ならばそのような申し入れに対し「いやあだ。御自分のことは御自分でなさい。まあったくあなたは昔から、云々。」と二言三言、それ以上にわたって我が幼少期における愛らしい過ちから、もし百万が一、公になるような事あらばこの先、日の当たる道をニヤケ面して闊歩出来ぬおそれのある過ちまでをちまちまと並べ立て、命にかえても守るべき相手、無償の愛を惜しみなく注ぐべき相手であるところの娘を地獄の門まで追い詰め、「これもすべてあなたを思っての事なのよ!」の一言でもって娘の身柄を地獄の門番へあっさりと引き渡すのである。そして憐れ、娘であるところのわたしは、愛ある仕打ちでは済まされないほどの傷を負うのである。見えない血が沢山流されるのである。



が、しかし。が、しかしである。本日の我が母はかなり狼狽している。目的地への道のりも、己自身も見失っている。五里霧中である。異常事態である。「これはもしかするともしかして、幸運はもはや我が手中に…?」などと淡い期待にのせて先述の申し入れをしてみる。すると「わかった。聞いてみる。」と一言の文句も無しに、二つ返事で了解。おお。幸運の女神は見つけた。あとはしっかりとその前髪を掴むまでだ。と鼻息荒く、来るべき時に備え、然るべき社用に勤しむ。



ほどなくして我が携帯電話に「OK」と幸運の女神からの否、母からの返信が入る。おお!やったよ、かあさん!ついに幸運を我が手に!!などと今にも歌い、踊りだしそうな軽やかなステップでもってステレオヘアーへと向かう。



そのようにしてわたしは誰もが羨む『こけしヘアー』を手に入れたのだ。うむ。久しぶりに短く刈られた我がヘアー。大満足。ぷくぷく!