ひな祭りに雪が降る

  • ぼっこり

いつも通りに出社し、いつも通りぼへぼへと仕事にとりかかり、いつも通り10時にちょっとおティーと洒落込み、あ、そうそうおトイレにも行っておきましょうとおトイレに行き、「ふへー、お昼までまだあるなあ、お腹空いたなあ。」とボヤキ一つ入れるいつも通りの午前中を過ごす、はず、であった、が、おトイレを済ませ席に戻った際「アレ?ちょっとおかし…くないかい?」と足元に違和感。つと見下ろしてみるとそこには、わたしの左足靴下の踵部には、ぼっこりと大きな穴があいていた。惜しげもなく肌露わに、ぼっこりと。あまりの豪快なぼっこり具合に思わず二度見。「うひょー。今日日わんぱく小学生だってここまで豪快にぼっこり穴のあいた靴下なんて履かないだろうよ!」というぐらいそれは大きくておミソジ過ぎた女性としては居たたまれなくなるほどのぼっこり具合であった。ああ。ううむ。誰にも気づかれないようにこそこそ、もじもじ、左足のぼっこりを隠すように不自然なステップを踏みながらロッカールームへ逃げ込む。そしてたまたま置いてあった裁縫セットでちくちくとぼっこりを縫い閉じる。薄暗いロッカールームの片隅で「ごめんね…かあちゃん、お前に新しい靴下買ってあげられなくて。ごめんよ、ヒダオ(左足だから)」などとどうでもヨロシな小芝居を交えながら。そしてぼっこりの事などつるっと無かった事にして何食わぬ顔して席に戻り、何食わぬ顔して仕事の続きに取りかかった、はずであったが、己の想像以上に「おミソジ過ぎた女性だのにぼっこり穴の空いた靴下を履き、出社し、気づかずに幾時間か過ごした」事実がかなりのダメージだったらしく、ペン立てに入れるはずのペンやらやらを誤ってお茶入りマグカップにぶっ込むこと、三回。この出来事は地味にしかし的確にマイハートの急所を容赦なくぼごりと刺激した。そんなひな祭り。ああ。ううむ。