これは『ももいろ』

さくばんしょうしょうのおしめりありましたがほんじつは、はれ。まだまだかんそうちゅいうです、ね。

  • はだいろ

ちっさい商店街にちっさい本屋あり。ちっさい本屋の硝子引き戸入り口正面突き当たりは奥の間。奥の間への間口手前にはレジ。ちっさい本屋の中央には、店内を二分するには少々嵩の低い雑誌棚が背中合わせに2台。ちっさい本屋の左右には壁面を利用した本棚。店舗前、硝子引き戸入り口左側にも雑誌棚。ある日駅へと歩く通りすがりにチラリ、と覗くとレジに座る老爺と右壁面の棚に向かう若い男性客が、一人。また別のある日家へと帰る通りすがりにチラリ、と覗くとレジに座るは老爺のつれ合いらしき老婆と右壁面の棚に向かう中年の男性客が、一人。またまた別のある日駅へと歩く通りすがりにチラリ、と覗くとレジに座るいつかの老爺と右壁面の棚に向かう中年の、以前見かけたのとはおそらく別人であろう男性客が、一人。それと同じ日家へと帰る通りすがりにチラリ、と覗くとレジに座るは老爺の連れ合いとおぼしき老婆と右壁面に向かう中年の、以前見かけた男性とも、行きともおそらく別人であろう男性客が、一人。ちっさな商店街のちっさな本屋を通りががりにチラリ、と覗く度に店番の老爺(もしくは老婆)と右壁面に向かう男性客一人。店番に老爺、老婆が揃うことも、店内に二名以上の客がいることなく、老爺もしくは老婆の店番と男性客一人の組み合わせ。ちっさな商店街のちっさな本屋の大きな、謎。そして、そのちっさな商店街のちっさな本屋の店先と右壁面一面には肌色書物がズラリと並んでいる。店に足を踏み入れたことは一度もない、が、チラリ覗く硝子戸越しにもハッキリ見えるその肌色図書たち。その品揃えはちっさな商店街のちっさな本屋にしてはかなりのもの。店の二分の一、すなわち右半面は肌色図書。だからわたしはそのちっさな商店街のちっさな本屋のことを『はだいろ』と読んでいる。そして本日も帰宅のさいにチラリ、と覗けば、だ。まっこと裏切らない『はだいろ』、だ。